ザン

戦いにおいては美的欲求が際限なく発揮され、勝利をより美しく手に入れる方法に執心するようだ。

彼が刹那的な生き方をすることにこだわりを持つのは理由がある。

命の危険を感じる時ほど命を実感することはない。そう思っているからだ。

「人生は『今』のひとときだけでいい」

彼はそう語る。
その生き方が彼のエネルギーを、確固たる域にまで押し上げている。

衰弱し切る岩人たちと異なる溢れんばかりの生命力の秘訣はそこにある。

「マンマ･･･？」

ザンの一言は、一向に衝撃とどよめきを与えた。

ダイアナの包み込むような気品と温かさが、彼の中の何かに火をつけたらしい。

「妾はお前の母親ではない、男ならもう少し堂々としてはどうだ？」

それがいけなかった。
その厳しさが余計に彼の故郷への憧憬を刺激した。

常にギリギリの所で生きている彼だからこそ、帰る場所への想いは強いのかもしれない。